住宅ローンの返済が始まったら、あとはひたすら決まった額を返していくだけ、と考えていませんか? 実は、ローン返済中でも、総返済額を減らす方法があります。それが「繰り上げ返済」。その仕組みとメリットを確認していきましょう。
■繰り上げ返済とは?
繰り上げ返済とは、毎月のローン返済額とは別に、ローン返済をすることを言います。
ローン総返済額は「元金+利息」で構成されています。繰り上げ返済では、このうち元金の部分を支払うことができます。これによって、元金にかかる利息が減るため、総返済額が減少するというメリットがあるのです。
繰り上げ返済には「全額繰り上げ返済」と「一部繰り上げ返済」の2種類があります。
全額繰り上げ返済とは、退職金等のまとまったお金が入った際に、ローン残金を一気に支払ってしまうことを言います。一部繰り上げ返済は、元金の一部を数回に分けて返していく方式です。
さらに、一部繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。どのようなメリット・デメリットがあるのか確認していきましょう。
まず、期間短縮型について説明します。これは、繰り上げ返済をした分、返済期間を短縮するというシステムです。月々の支払額は変わりません。一方の返済額軽減型は、返済期間は変えずに、毎月の返済額を減らしていくシステムです。
利息額について計算していくと、期間短縮型の方がより節約効果が高く、総返済額を少なくすることができます。しかし、一度期間を短縮してしまうと、元に戻すことはできません。金利の上昇や、収入減など不慮のアクシデントを考慮すると、返済額軽減型のほうがよりリスクを避けやすいと考えられます。
■よりお得に繰り上げ返済するには?
繰り上げ返済の節約効果をよりアップさせる方法があります。それは、早いタイミングで繰り上げ返済していくことです。実際に計算してみましょう。
以下は、借入額4,000万円、金利1%、当初返済期間35年、元利均等方式で計算した場合の比較です(繰り上げ返済の方式は期間短縮型)。
・繰り上げ返済しない場合
総返済額=約4,742万円 利息分=約742万円
・10年後に500万円繰り上げ返済した場合
総返済額=約4,621万円 利息分=約621万円
・5年後に250万円、10年後に250万円返済した場合
総返済額=約4,599万円 利息分=約599万円
これを見ると、同じように500万円返済した場合でも、早いうちから返済をしていた方が利息分、安く済んでいることが分かります(このケースでは、621万円-599万円=22万円お得)。
「まとまった資金ができるまで待ってから」返済するのではなく、早い時期からこまめに繰り上げ返済していくのが賢い方法です。
■繰り上げ返済の注意点
前述したように、繰り上げ返済を全くしない場合と、した場合では、総返済額に大きな差が発生します。
ただ、気を付けたいのが、総返済額を減らしたい気持ちが強くなるあまり、繰り上げ返済に「ハマってしまう」ケースです。中には生活資金を回してしまう方もいますが、これはNG。
繰り上げ返済は、あくまでも月々の家計の中で「余った資金」の中から行うようにしましょう。でないと、気持ちに余裕がなくなったり、急な出費に対応できなくなったりするなど、せっかく繰り上げ返済していたのに、それが裏目に出てしまう可能性があります。
■繰り上げ返済を考えるなら、ローン選びは慎重に!
住宅ローンを選ぶ際、最も重要視されるのは「金利」でしょう。金利が低いほど利息は少なくなり、総返済額も少なくて済みます。ただ、繰り上げ返済を考えている方は、その使いやすさもきちんとチェックした上でローン選びをするようにしましょう。
具体的にチェックしておきたいポイントとは
・繰り上げ返済手数料
・繰り上げ返済の受付額
・オンライン手続の可否
の3つです。
繰り上げ返済手数料ですが、少し前まで銀行ローンでは2~5万円程度かかることが通常でした。しかし、ネット銀行を中心として繰り上げ返済手数料を無料とする金融機関が増えてきて、現在では手数料無料の銀行は多くあります。
せっかく繰り上げ返済で利息を軽減できても、手数料を支払っていては結果的に損をすることにもなりかねません。特に、こまめな繰り上げ返済を考えている方は、手数料をしっかりと確認しておきましょう。
同様に、「いくらから受け付けてくれるのか」というところも利便性に影響します。こちらも以前よりハードルは下がり、1円から受け付けてくれる金融機関も。ただ、例えばフラット35は100万円からとなっていますし、10~50万円の銀行もあります。
オンライン決済を利用できる金融機関もあり、こういったところでは、わざわざ銀行に出向く必要はありません。忙しい方にはうってつけのローンと言えます。
このように、ローンを選ぶ際は、繰り上げ返済の利便性もポイントとなることを、しっかり押さえておきましょう。