ひと昔前、住宅ローンを借りる際の融資先といえば「住宅金融公庫」でした。しかし、2007年に行政改革の煽りを受けて、「住宅金融支援機構」へと移行。その後は、融資先として銀行が台頭し、現在ではむしろ銀行などの民間企業で住宅ローンを借りるのが一般的となっています。
では、民間ローンのメリットとは何でしょう? きちんと把握するためにも、他のローン(公的ローン、フラット35)の性格と特徴を抑え、それぞれの違いを知っておきましょう。
■公的ローン
まず、公的ローンを紹介していきます。「公」という言葉の示す通り、民間ではなく、国や都道府県などが融資先となるローンです。前述した「住宅金融公庫」は旧・建設省(国土交通省)と財務省が所管していた団体であり、まさに公的ローンの代表格でした。
住宅金融公庫がなくなって久しい現在、公的ローンの種類は
・財形住宅融資
・自治体融資
の2つに分類することができます。
自治体融資は、それぞれの自治体によって金利等が異なり、また用意していないところもあることから、ここでは詳細は省きます。ただ、条件によっては銀行より有利となることもあるため、各自治体にローンの有無について問い合わせておくようにしましょう。
さて、財形住宅融資ですが、これはかつての住宅金融公庫である「住宅金融支援機構」が用意している住宅ローン制度です。
特徴的なのはその利用条件。「すでに財形貯蓄をしている人」だけしか利用することができません。
財形貯蓄には
・一般財形貯蓄
・財形年金貯蓄
・財形住宅貯蓄
といった3タイプがあり、いずれかを利用してきた人が対象となります。国と企業が協力して行う制度なので、そもそも勤務先の企業に財形貯蓄制度のない場合は対象外です。
ローンとしての特徴を見ると
・借入可能額の上限は、財形貯蓄残高の10倍まで(最大4,000万円)
・返済期間は最大35年まで(中古の場合、25年となることも)
・金利は5年ごとに見直される(5年固定金利)
・適用金利は申し込み時点で決まる
といったものが挙げられます。
財形貯蓄をしてきた方は、銀行の住宅ローンと金利を比較してみましょう。結果、有利なようであれば利用する価値は十分にあります。
■フラット35
住宅金融支援機構が準備している住宅ローン制度は、財形貯蓄をしていなければ全く利用することができないかというと、そうではありません。「フラット35」というものがあります。名前を聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか?
国の制度であれば、フラット35も公的ローンなのでは? と考える人もいるかもしれません。しかし、フラット35は実際には、公的機関(住宅金融支援機構)と民間融資機関(銀行など)が協力した制度です。
仕組みを少しだけ見ていきましょう。フラット35の場合、申込者に融資を行うのは銀行です。ここで銀行に発生した債権を、住宅金融支援機構が買い取っているのです。そして、この債券をさらに信託するなどして運用しています。
詳しい仕組みを知りたい方以外は、「フラット35=国と銀行がコラボしたローン」というくらいに覚えておきましょう。
ローンとしての特徴は、
・最長35年間の固定金利
・借入可能額は物件価格の90%まで(最大8,000万円)
・保証料無料
・繰り上げ返済手数料無料
といったところです。
金利の変動に左右されない、長期固定金利が魅力のローンです。また、比較的審査が厳しくないところも人気のポイント。
窓口は銀行や信用金庫等、民間の金融機関ですので、固定金利を考えている方は検討してみましょう。
利用条件として、住宅金融支援機構が定めた技術基準をクリアした物件であることというものがありますので、使えるかどうかはハウスメーカーや工務店、不動産会社に問い合わせておく必要があります。
■民間ローン
公的ローン、フラット35以外の手段としては、民間ローンがあります。
民間ローンの代表は銀行や信用金庫、信用組合といったところです。これに加えて、JAローンやノンバンク系ローン(信販会社など)も民間ローンの一部。生命保険加入者を対象とした、保険会社による住宅ローンもあります。
民間ローンの特徴としては
・様々な金利タイプが選べる(変動金利型、固定期間選択型、全期間固定金利型)
・信用保証会社の保証が必要
・団体信用生命保険への加入が必要
といったポイントが挙げられます。
最近では、ネット銀行を中心に民間ローンの金利は非常に低いため、住宅ローンといえば民間で借りるというのが一般的です。各社の違いは金利以外にも繰り上げ返済手数料や保証料、事務手数料などに現れてきます。よく比較検討したうえで、自分にとって返済しやすいプランのある金融機関で融資を受けるようにしましょう。